音楽における個性とは何か(という名目の推し語り)第二章「構成」
さて、昨日は「音楽の個性」の要素として「音」
それも「メロディ」「リズム」「楽器・音色選び」という点に絞って推し語りをしました。
本日は、「構成」を軸に推し語りをします。
ちなみに、昨日の記事を読み返したらちっとも本格的じゃなくて
ただただ音楽に限界化する限界オタクだったのでちょっと笑いました。
【音楽の個性を決定する要素】
1 音
2 構成
3 気迫
4 奏法(演奏者や歌手の場合)
5 歌詞(歌詞がある場合)
一口に「構成」といってもいろいろあるので(定型表現)、
本項ではさらに次のように掘り下げていきたいと思います。
①コード進行
②パート分け
③編成
④ジャンル
①コード進行
「コード進行とはなんぞや」という方のために言うと、
わかりやすく言えば「伴奏の音の進み方」「伴奏のメロディっぽいもの」です。
メロディを気持ちよく(違和感なく)聞けるようにするだけでなく、
その曲の雰囲気をわかりやすくしたり、逆にわかりにくくしたり、
明るくしたり、暗くしたりする要素になります。
ある程度の人間が気持ちよく聞けるコード進行はだいたい似ているのですが、
あえてそういう通例に逆らう(気持ち悪くする)ことで強く印象づけたり、
通例とは少しずらすことでおしゃれさや神秘さを添えたりすることもできます。
ここでは、そういった「伴奏のメロディ」の使い方が特徴的な人をピックアップします。
コード進行No.1:The Structures 氏
準ボカロと呼んでもいい音声合成ソフト「ボイスロイド」をボーカルに置いた楽曲ですが、
この楽曲もまたボカロらしい流行とは一線を画す要素があります。
というのもこのお方が作られる楽曲は、
全体的に日本人としてはあまり馴染みのない(気がする)コード進行をしています。
このお方の音楽は(聞いた感じなのであまり確証はないですが)
洋楽で用いられるコード進行をベースにしていると思われます。
日本人に馴染みのある音楽よりもどこか気品さというか、高級感というか、
そういったほのかな高揚感のある楽曲が多いのです。
また、ボーカルやメインメロディが「メロディ」として独立する(ただ伴奏に乗るだけ)だけでなく、
伴奏のコードと合わさって「メロディもコードの一部」に化けるような作り方をする方なので、
より幻想的に、より高揚感のある聴こえ方をするのが特徴です。
洋楽っぽさ故に日本人としては好みが分かれるかもしれませんが、
この不思議な高揚感は一度体感すると時折思い出して
気がついたらリピーターになっている、なんてこともヾ(๑╹◡╹)ノ"
コード進行No.2:gomame P 氏
往年のボカロ音楽の雰囲気を踏襲しつつも、やはり一筋縄ではいかない展開を持つボカロロックのお方です。
初めて聞いた時に「んっ!?なんだ!?」と耳を奪われ、怒涛の展開に飲まれる曲調。
「ポップス」とは大きくかけ離れた、聞き流すことを許さない独特の展開は、
さながら一歩先も読めない迷路のようです。
元になっている音楽は私の見識だと正確には読めませんが、
おそらくプログレッシブロック(極めて変則的なロック、だと思う)の血があるのかなと思われます。
この曲中にも調声(キー、その曲の基本的な♯や♭の個数)が何の前触れも無く変わったり、
半音(ドとレの間など、ドレミファソラシドそれぞれの半分上または下)で移動したりするなど、
聴き心地よりも音楽の動きに特化した構成になっています。
こうしたコード進行は「混乱」や「曖昧さ」、時に「不安」や「憎悪」を表すのに用いられ、
またそれまでの心地よい流れを一掃したい時にあえて用いる場合もあります。
聞き手に駆け回させるのではなく、音楽そのものが駆け回っているような、
嵐のようなコード進行が特徴的な方です。
普段EDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック、テクノ音楽の一種)を聴くような方でも、
激しいのがお好きな方はおそらくこういうロックも好きなのではないでしょうか(*´ω`*)
コード進行No.3:なつめ 氏
同じくボカロロックですが、打って変わって非常に耳馴染みのよく、
どこか懐かしくて儚い雰囲気を感じ取れたのではないでしょうか。
「ボカロ」というよりも「懐かしいロックバンド」という聴き心地で、
油断したら少し涙ぐんでしまいそうになります。
このお方のコード進行は、いわゆる「日本人大好きコード進行」と呼ばれるものの一つをアレンジしたもので、
この「アレンジ」がこのお方独特の懐かしさを生んでいると思われます。
この楽曲ではポツリポツリと歌われるメロディによって相乗効果が生まれ、より世界観に引き込まれます。
The Structures氏の点で語った「ボーカルもコードの一部に化ける」という現象はこのなつめ氏の楽曲でも度々起こり、
なつめ氏の場合はそれが「思い出へ引き込む力→懐かしさと儚さ」として発現します。
このコード進行で次はどんな世界に引き込まれるのか、気になる方はきっと少なくないはず。
コード進行No.4:atelier 氏
音色そのものは激しいロックサウンドながら、紡がれる音は幻想的な世界観を構成しているという
相反する性質を一つの音楽で持った不思議な魅力のあるお方です。
なつめ氏同様、されどなつめ氏とはまた違った世界観の儚さがあり、心を揺り動かされる人間は多いはず。
この幻想的な音楽の最も特筆する点は、
「コード進行は決して複雑じゃない」
「複雑なコード進行でないからこそ生まれるサウンドである」という点です。
シンプルなコード進行を用いることで「歩を進めている」という感覚を生み、
コード進行以外の要素で盛り上がりを体現することで「広がり」を生み、
そこに高く響くボーカルを乗せることで「儚い幻想感」を織りなすことができます。
同じミュージシャン、それも「何にでも化けられる」と豪語するはるくんも、
この幻想的な曲調は(分析できても)真似ができません。
シンプルなのに盗めない、このお方のセンスが光っている証拠です(*´ω`*)
コード進行No.5:シンヤ・マツモト 氏
ロックとジャズとポップスを混ぜたようなおしゃれで独特な楽曲が特徴的な方です。
途中までは「この人は"ジャンル"の項目で書こうかなぁ」と思ったのですが、
「いや、この人はコード進行だな!」と途中で書き換えました(笑)
というのも、この方のコード進行は
先のなつめ氏の項で取り上げた「日本人大好きコード進行」を異なる形でアレンジしていることが多く、
またJ POPに散見される「階段進行(音が一つずつ昇ったり、逆に降りたりするコード進行)」も多分に用いられています。
この二つのコード進行自体は決して珍しいものではありませんが、
このお方の楽曲ではそれらが効果的であったり、あえて意外な部分でさりげなく用いたりすることで音楽の独特さを演出しています。
ポップスのツボを押さえつつ、それらを時にアレンジしたり前面に出したりすることで楽曲の展開を華やかにしていて、
同じミュージシャンとしてもかなり勉強になる作りとなっています。
②パート分け
「パート分け」「パート」と言うと、
合唱コンクールをやったことがある人だと「歌う/演奏するメロディの一部」だとか
「別の楽器や別の演奏/歌唱部分」という風に思うかもしれませんが
ここでは「Aメロ、Bメロなどの分け方」という、文字通りの「構成」についてお話しします。
「Aメロ→Bメロ→サビ」という一般的な流れを普通に2回繰り返すのか、
「Cメロ」という新しい流れを何処かに追加するのか、
あるいは「Bメロ」をわざと抜いてコンパクトにしてみるか、
はたまた「全てサビ」「全てAメロ」にするのか、などで楽曲自体の個性も変わります。
ここではわかりやすく、「パート分けの区別がない(またははっきりしない)」方
つまり「展開が大胆ではなくさりげない」方をピックアップします。
パート分けがはっきりしないのに確実に展開が進む音楽も、聴き込むと極めて面白いものです(*´ω`*)
パート分けNo.1:AKR-FÏTW 氏
流行病の名前を冠する曲名で、楽曲自体も自粛期間中の窮屈さやウイルスへの怒りやストレスを想像させる、
展開こそ平坦ながら想像の膨らむ、BGM向きのようで実は聴き込み向きの楽曲です。
このお方の楽曲は、
リズム隊(ドラムやパーカッション、短い音のシンセサイザー等)が軽やかでノリの良い半面、
展開が大きく動くということは珍しく、聞き流そうと思えばBGMとして聞き流せてしまいます。
勿論、耳心地の良さを求めるのならば聞き流しても十分かっこいいのですが、
聴き込むと「かっこいい」だけでは語り切れない世界観へ没入することもできます。
「この音声は何を表しているんだろうか」
「この効果音は怒りか、それとも不安か」
「この鳴り響くシンセは街並みだろうか」
などなど、リズム隊のノリの良さとテクノサウンドも相まって、
考えながら聴くことでグレースケールのテクノ的な映像が頭の中に再生されます。
一見BGMのような音楽も、テーマに沿って少し踏み込んで聴きこめば、途端に映像的な音楽に聞こえてきます。
それを体現するかのような楽曲です。
#DTM#インスト
— シラカミ777 (@bonyariKAZUYA) August 12, 2020
というわけで出来ました。
タイトルオチの曲がいつまでも固定にいるのもアレなのででっち上げた曲
theLOOP です。
エフェクトとか音色いじり多少頑張りました。 pic.twitter.com/At4BjZIFWk
パート分けNo.2:シラカミ777 氏
テクノ楽曲を多く手がける方で、こちらも不思議な魅力のある方です。
この楽曲には特にその魅力があると私は考えます。
一聴すると大きな浮き沈みのない、クラッシュテクノ系のかっこいいBGMなのですが、
暗い和音(フラット系のコード)が後ろで響いていて、
明るい和音(どちらかというとシャープ系のコード)が近くで鳴っているという、
相反するものが同時に「程よい距離で」鳴っているからこそ生まれる浮遊感に身を包まれます。
ベースの音が最後までずっと変わらないという点も不思議さや浮遊感を増幅させ、
聞き手を徐々にサイバー空間へ転送するような感覚を与えます。
さらっと聴く限りではドラマ性の感じられない音楽ですが、
ふと気がついた時に音楽に飲み込まれるような、魔性のテクノ音楽です。
③編成
一つ前に話した「楽器・音色選び」と似ていますが、
これは大体の楽曲に共通で用いる「複数の楽器・複数の音色」を指します。
例えば、「この人の曲は大体ギター・ベース・ドラムスを使ってる」とか、
「この人は大体この楽器とこの楽器をこういう時に使う」とか、
あるいは「この人の曲は大体楽器が多い/少ない」などになります。
そんな「編成」が個性的な推しをピックアップします。
編成No.1:Earth, Wind & Fire の方々
はい、またまた大御所(というより伝説)アーティストです。
しかしこの「編成」という点で語るならまず外せない方々でしょう。
様々な音楽を融合させ、独特の音楽スタイルを築き上げたバンドです。
分類としては「バンド音楽」になりますが、
エレキギター、ブラス(金管楽器)、シンセサイザー、ボンゴ等のアフリカン打楽器、ドラムスに
ツインボーカルという大所帯のバンドです。
加えてこの楽曲では重厚なユニゾンコーラス(同じメロディを違う高さで歌うコーラス)までついています。
「アフリカ風のノリ」で「ロックやポップスのような曲」を「ジャズバンドのように」演奏するという
言葉にすると完全に意味不明ですが、
聞けば「うっわおしゃれ!超かっけえ!何コレェ!?」と引き込まれる伝説のバンドです。
テクノ音楽が席巻する昨今ではいくら伝説のバンドと言われてもピンとこない人も増えてきていると思いますので、
是非これを機に聴いてみてください。
間違いなくビビります。
編成No.2:Dr.イエロー46 氏
お気づきでしょうか。気づきますよね。気づくけど「そんなばかな」って思いますよね。
この曲のメインで使用されている音声、「プリンターの音」です。
プリンターの音がノリの良いクラッシュ系テクノのように「演奏」されます。
勿論こんな風に意外な事をするばかりの方ではありませんが、
ありとあらゆるものの音(ソフトウェアから物音まで)に可能性を見出す方で、
サンプリング系テクノ音楽を基盤にありとあらゆる音色を引っ張ってくるチャレンジエンジニア系のお方です。
また、このお方の場合、先の「ありとあらゆるものの音に可能性を見出す」という特性があるため、
編成自体は決して固定ではありません。
「そうくるか!」という意外なところから選んで引っ張ってこられます。
同じ人が紡ぐサンプリング系テクノ音楽だというのに、
編成や使い方をその時その時で効果的に変え、一曲一曲の表情を大きく変えるという、
音楽の可能性を無限大に思わせるお方ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
④ジャンル
一つの音楽ジャンルに特化する、というのも個性の一つです。
会社員で言えば、「日商簿記1級持ってます」とか「パソコン仕事は任せてください」とか
「接客はトップクラスさ!」とか「指示なら任せてくれ」とか、そういう感じです。
また、特定の音楽ジャンルに特化する、というのではなく
「このアーティスト独特のジャンル」「ジャンルとして唯一無二」という場合もあります。
そんな独特な推しをピックアップします。
ジャンルNo.1:xi'an 氏
(再生時音量注意)
私の知る限り、Extratone(エクストラトーン:ドラムスの打ち込み音源を物理的にありえない超速度で鳴らす音楽ジャンル)というジャンルにおいて他の追随を許さない天才の一人です。
現在はEDMなども手掛けていますが、
このほとんどノイズに等しい破壊的サウンドを
「ジャンル慣れしていない人間にも」ある程度聞かせられるようにするというのは、
ポップス音楽に深く理解の及ぶ人間か、天才であるかのどちらかでしか為し得ません。
そして彼にはこれを作った時点で音楽理論などを勉強している素振りはありませんでした。
彼は間違いなくテクノの天才、というより鬼才です。
同時期に製作された他ジャンルの楽曲でもしばしばExtratoneがフィーチャーされており、
Extratoneが彼に与えた影響は非常に強いことと、
それを彼が「耳馴染みのない人」へ聞かせられる才覚のあることが窺えます。
余談ですが、はるくんが時たま楽曲で用いるExtratone要素は彼の影響を多分に受けています。
ジャンルNo.2:MaruCoo 氏
スーパーや売店のBGMを彷彿とさせる聴き心地でありながら、
懐かしさや暖かさに包まれるような、穏やかな曲調が特徴のお方です。
ジャンルとしては「イージーリスニング」になると思われますが、
単に一辺倒に静か、というわけではなく、跳ねるような活発な曲も勿論作られています。
しかしどれも踊ったりはしゃいだりするようなハイテンションはなく、
活発な子供の頃を思い出すようであったり、
暖かい季節に芽吹く草花を見るようであったりして、
冷たくなりかけた心が音楽を通してゆっくり暖かくなっていくような感覚に包まれます。
優しい曲が好きな方にも、心がささくれ立ってしまっている方にも、是非ともお勧めしたいお方です(*´ω`*)
ジャンルNo.3:白羽 氏
アートコアテクノ(本来はピアノやストリングスなどを主体とした古典派音楽とハードコアテクノないしドラムンベースをかけ合わせたジャンルだが、幻想的な音色と速度のあるリズム隊からこれに準ずると判断しました)が主力と思しきお方です。
迫力のある低音、軽快で高速なリズム隊、そしてその上に重なる幻想的で煌めきのある音色によって、
聞き手を綺麗で妖しい世界へ旅させるような楽曲が印象的です。
時に嵐の中で歩を進めるようであり、
時に吹雪の中を飛んでいくようであり、
不思議な世界で物語の主人公になったような錯覚さえ覚えます。
時折襲われる激しい低音の電撃も迫力があり、聞き手を気持ちよく圧倒してくれます。
テクノ音楽で異世界へ飛びたいと思う方に是非ともお勧めしたい方ですヾ(๑╹◡╹)ノ"
ジャンルNo.4:BUMP OF CHICKEN の方々
「独特のジャンル」という点では語るのを避けられないロックバンドですね。
「楽曲の求める姿を追求する」というスタイルであるため、時代とともに音色の変化も著しくなっていますが、
その根幹にある宇宙的な響き、
ガラスのような煌めきのあるサウンド、
そして安心感のあるテンポ等は決して色あせていません。
どれだけ見てくれの姿を変えても、今なお独特であり続けるバンドと言っても過言ではありません。
余談ですが、
はるくんはOrbital period前後のBUMPが好きなんですが、
妹は今なおBUMPを追いかけて超全肯定しており、
たまに妹から押し売りされて軽く喧嘩になります。
音楽的に改めて聴き直してみると、
今の姿のBUMPも「変わっちまった」と呼んで離れるのはもったいないほど相変わらず魅力的です。
語りたいことが多すぎて気がついたら午前2時。
推しを語るのも簡単ではありません( ̄◇ ̄;)
しかし、推しを語る時に「どうやったら人にわかりやすく伝わるだろう」と考えるのは、
不思議と疲れよりも楽しさが先に立ちます(๑>◡<๑)
次は「気迫」です。
はるくんも気迫を感じさせるあーてぃすとになりてぇなぁ(ハナホジ)
次に登場する推したちはいかにして気迫を生み出しているのか。
そしてそれをはるくんはちゃんと言語化できるんでしょうか。
多分無理だと思います。
それでは、次の記事で!
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